チップレット市場の繁栄に向けて、Armエコシステムが標準規格で協力

February 22, 2024

 

著:リチャード・グリセンスウェイト(Richard Grisenthwaite), エグゼクティブ・バイスプレジデント、チーフアーキテクト兼フェロー

※本資料は、英Armが英国時間2024年2月14日に公開したブログ記事の抄訳です。

 

製造関連のコストと生産量を管理しつつ効率性を極限まで高め、パフォーマンスの限界を突破し続けることは、Armパートナーが常に解決を模索している重要課題です。そして現在、ますます複雑化の進むAIアクセラレーション対応コンピューティングが進化する中、重要なソリューションとして台頭しているのがチップレットです。

チップレットを組み合わせることで、より大型で複雑なシステムの開発が可能となり、単一の大型モノリシック・ダイではなく、多数の小型ダイで構成される単の一ソリューションとしてパッケージ化と販売が可能となります。その結果、かつてなく魅力的な設計の可能性が広がっており、これまで既製ソリューションを選択していたメーカーにとっては、カスタムシリコンの採用というエキサイティングな展望が広がっています。こうした魅力を支える中心的な要素は、コンポーザビリティの概念、すなわち、既存あるいは標準化された一連のチップレットを再利用することで、オーダーメイドの完全なソリューションを組み立てることにあり、各チップレットはコストパフォーマンスに最適化されています。このような再利用性と標準化により、マルチベンダーによるチップレットのサプライチェーンが実現することで、新規企業と既存企業の双方がパフォーマンスと差別化の機会を活用できると考えられます。

チップレット市場の発展に必要な共通のフレームワークを提供

こうした機会を実現するため、チップレットのパーティショニング時の差別化を伴わない多数の選択肢と、それに関連するインターフェイスの標準化への影響に関して、設計者には連携が求められます。次世代のシリコン設計者には共通のフレームワークが必要であり、こうしたフレームワークには、大規模かつ集中的なコラボレーションと投資が必要です。今回、このフレームワークの実現に寄与すると考えられる以下の2つの新たなイニシアチブについて、最新情報をご紹介いたします。

  • Arm Chiplet System ArchitectureCSA):Armとパートナー20社以上のグループは現在、チップレットベース・システムのパーティショニングに関して最適な選択肢の分析と定義を行っています。その目標となるのが、Arm CSAの開発であり、これにより複数のサプライヤー間で各種コンポーネント(物理設計IP、ソフトIPなど)の再利用が可能になります。Armが率いるグループは、モバイル、オートモーティブ、インフラストラクチャなど、複数の市場セグメントを網羅しており、Armベースシステムを複数のチップレットにパーティショニングする方法や、高レベルのプロパティ(システムメモリの要件や信頼の基点)など、多種多様なチップレットを対象に、システム設計の選択肢をより効果的に標準化する方法を検証しています。
  • チップレットのプロトコル標準化に向けてAMBAを更新:過去27年以上にわたり、AMBAはオープンな業界標準の基礎となってきました。AXIやCHIなどのAMBA仕様は、数十億個ものデバイスへの採用実績を誇ります。
    • AMBA CHIは高速で評価が高く、パケット化されており、チップレットに最適です。以前に発表したAMBA CHI C2C仕様は、既存のオンチップCHIプロトコルを活用し、パケット化の方法を定義することで、チップ(レット)・チップ(レット)間の転送を可能にしています。業界全体の多様なパートナーとのコラボレーションを経て、このオープン仕様の公式リリースをお知らせできることを嬉しく思います。詳細については、ブログ記事(英文)をお読みください。
    • AXIベースの既存の設計の中には、チップレットを実現する上で不可欠なものが複数存在します。シリコンベンダー各社は現在、自社のシングルチップ設計でAXIのメリットを活用されており、私たちはこうしたベンダーが採用できるオープンなAXI C2C仕様の実現に取り組んでいます。

複雑な問題の解決には、コラボレーションが必要

AMBAとCSAに対するArmの投資により、パートナーはIPブロックで構成されるモノリシック・チップのように、Armベースシステムを複数のチップレットに分解できるようになります。こうした新たな基準に加えて、Arm固有で業界全体のレイヤーも複数存在しており、以下の分野でも継続的なコラボレーションが必要です。

  • 物理層:UCIeなどの業界標準は、パッケージ内のチップレット間でデータを転送するための物理層(AMBAやPCIeなど各種プロトコル向け)と、これ以外のシステム・アグリゲーションに関する差別化を伴わないチップレットの側面を定義する上で必要です。
  • プロトコル:PCIeやCXLなどの業界標準のプロトコルとAMBAなどのオンSoC相互接続プロトコルを併用することで、市場では、明確に定義されたペリフェラルをマザーボード全体から単一のパッケージに集約できると考えています。
  • ハイレベルのプロパティとパーティショニング:AMBAプロトコルを使用するArmベースシステムでは、SoCをチップレットに分割するという無限の柔軟性が存在します。CSAにより、Armエコシステムは今後、断片化の抑制に向けた最も価値あるパーティショニング・スキームについて同意を得られる見通しです。

Armベースの多様なチップレット市場

マスマーケットでのチップレットの採用が実現するのは、今後数年を要する見通しですが、こうした標準規格によって、チップレットベース・システムの進化が加速する可能性について、私たちは大いに期待しています。Armプラットフォームの柔軟性は、昨今のチップレット・エコシステムの台頭に寄与しています。これは、パートナーによるカスタムシリコン・ソリューションの迅速な構築を実現しつつ、彼らの必要とする柔軟性を維持するという、私たちにとって自然な流れです。ますます複雑化する状況の中で、業界が要求する演算機能、パフォーマンス効率、ソフトウェア・ソリューションを提供し続ける中、最近発表されたArm Total Designなど、最新の標準規格やプログラムを中心にエコシステムの力を集結させることで、活況かつ多様なArmベースのチップレット・エコシステムを実現していきます。

Armについて

Armのテクノロジーは、未来のコンピューティングを築く存在です。そのエネルギー効率に優れたプロセッサ設計とソフトウェアプラットフォームは、2,800億個以上のチップを通じて高度なコンピューティングを実現し、センサーからスマートフォン、スーパーコンピュータまで、あらゆる製品をセキュアにサポートしています。1,000社以上のパートナーとともに、チップからクラウドまで、あらゆる場所でAIを活用できるようにし、またサイバーセキュリティの分野では、デジタル世界における信頼の基盤を提供しています。Armは、これからの未来を築く根幹を支えていきます。

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