Armv9ベースの新しいCPUがモバイルを超えてAIを高速化
著:Saurabh Pradhan、Armクライアント事業部門 CPU製品管理担当ディレクター
※本資料は、英Armが英国時間2024年5月29日に公開したブログ記事の抄訳です。
現在、モバイルのAIワークロードの大半はArm CPUで実行可能です。スマートフォンの分野では、Armのv9 CPUテクノロジーを使用したAI対応の最新スマートフォンがその中心となっています。たとえばMediaTek Dimensity 9300を搭載したvivo X100、X100 Proスマートフォン、Samsung Galaxy S24、Google Pixel 8は、AIイノベーションにかつてない機会を提供しています。
AIワークロードが複雑化し、多くの処理を必要とする中、Armは最新のArmv9.2 CPUクラスターで高性能、高効率、多機能を追求することで次世代AIの基盤を整備しています。これは、あらゆる場所でAIを実現するというArmの目標の一環であり、フラグシップスマートフォンやAI対応PCから、メインストリームのモバイル、XR、ウェアラブル機器まで、幅広いコンシューマー機器にメリットをもたらします。
新しいArmv9 CPUのラインナップには、高性能を追求するArm Cortex-X925 CPU、卓越した持続性能を誇るArm Cortex-A725 CPUが加わりました。また、低負荷ワークロード向けに優れた電力効率を実現するArm Cortex-A520、さまざまなArmv9.2 CPUクラスターで消費電力と実装面積を削減するDynamIQ Shared Unit(DSU-120)も刷新しました。これらはすべてArm最速のAndroid向け演算プラットフォーム「Arm Compute Subsystems (CSS) for Client」に統合されています。
Armv9 CPUポートフォリオへの新たな追加とアップデート
Cortex-X925:Cortex-X史上最高の性能向上
Cortex-X925(旧コードネーム:Blackhawk)は、前年比でCortex-X史上最大の性能向上を実現しました。シングルスレッド(ピーク)性能は36%(Geekbench 6.2と2023年のプレミアムAndroidスマートフォンを比較)、AI性能は46%(Phi-3のTTFTとArm Cortex-X4 CPUを比較)向上しています。
Cortex-X925のパフォーマンス向上
電力パフォーマンスを見ると、Cortex-X925は必要なところでピーク性能を発揮します。各種アプリケーション、生成AIワークロード、ウェブサイトの閲覧、カメラの後処理、動画録画、AAAゲームなどの応答性が向上し、より快適に使用できます。
この性能向上は、Cortex-X925の優れた性能基盤と、その先駆的なマイクロアーキテクチャによって実現されています。Cortex-X925の最適化された3nm実装、そしてプレミアムサブシステムとパッケージにより、次世代のコンシューマー機器の性能スコアは30%以上向上します。マイクロアーキテクチャの改良(最大3MBのプライベートL2キャッシュを含む)は、幅広いコンシューマー機器でCPUクラスター構成の自由度を高めることになります。
CSS for Clientの一環として、ArmはCPUの物理実装の共同設計と提供を行っています。主要ファウンドリーパートナーとの協力により、3nmですぐにテープアウト可能なCortex-X925物理実装を実現しました。これによりパートナー各社は3nmプロセスでPPA(消費電力、性能、面積)のメリットを最大限に活用するとともに、量産対応のシリコンソリューションによりシリコン開発と導入にかかる時間を短縮可能です。
Cortex-A725:卓越した持続性能
ArmのCortex-A700シリーズのCPUは、さまざまな性能効率の製品を取り揃えています。Cortex-A725も同様で、CPUワークロードの主力製品となっています。Armのエンジニアリングおよび設計チームは、卓越した持続性能が求められるAIやゲームの主要なユースケースに焦点当て改良を重ねました。これによりCortex-A720と比べてパフォーマンスは35%、電力効率は25%向上しました。
Cortex-A725のパフォーマンスと電力効率の改善
こうした性能向上は、Cortex-A725のマイクロアーキテクチャの改善により実現されます。Cortex-X925と同様、Armは高度な物理実装を通じてCortex-A725の3nmでの最適化実装を提供します。また、メインストリームのコンシューマー機器向けに面積を最適化した実装も提供しています。
Cortex-A520とDSU-120の刷新
CSS for Client向けに更新されたCortex-A520は、TCS23のCortex-A520を15%も上回る最高の電力効率を提供します。刷新されたCortex-A520は、最新の実装と高度な3nmの物理実装により実現されています。
刷新されたCortex-A520
新しいCSS for Clientの一環として、次世代用途やコンシューマー機器向けにDSU-120も強化されました。性能と効率を高める新しい機能性、メインストリームのコンシューマー機器を想定した低消費電力モードと機能強化が含まれるほか、高性能ユースケース向けに最大14コアまでの拡張オプションが維持されています。これにより標準的なワークロードで消費電力が50%削減され、CPUクラスター全体でキャッシュミスの消費電力も60%削減されるため、コンシューマー機器のリーク電力が減り、バッテリー寿命が伸びます。ハーフスライスパワーダウン、クイックナップなどの新しい省電力モードや機能強化は、生体認証、文字起こしから、AIスマートカメラ、コンテンツ生成、MLベースのAAAゲームまで、幅広いAIワークロードに対応します。
DSU-120のアップデートと改良
かつてない性能、効率性、汎用性に優れたCPUクラスター
新しいCPUや刷新されたCPUは、幅広いコンシューマー機器にわたるArmのCPUクラスターの構成に、これまでにないレベルの性能、効率性、汎用性を提供します。高性能の面では、新しいCPUクラスターは先行世代のCortex-X4を使用したCPUクラスターと比べ、AI性能が46%高く、応答性の高いパフォーマンスと持続的なスループットに貢献します。ユーザーエクスペリエンスの主な指標(パフォーマンスと消費電力の組み合わせ)はTCS23 CPUクラスターと比べて30%向上し、アプリケーションの動作やウェブ表示の高速化、AAAゲームの快適性、バッテリー寿命の延長につながります。
最新のArm CPUクラスターは、あらゆるコンシューマー機器分野で優れた拡張性を発揮します。たとえばデスクトップやノートPCでは、現在出荷されている製品より性能が25%向上し、クラス最高の性能を実現します。一方、TCS23における先行世代のDSU-120より消費電力と実装面積を削減し、Cortex-A725とCortex-A520による実装面積と消費電力の最適化とともに、メインストリームのデバイスに適した柔軟なCPUクラスター構成が可能となります。これにより、さまざまな低価格帯のコンシューマー機器でパフォーマンス追求やAI搭載が可能となり、日常的なデバイスにおいても高度なAI機能を利用できるようになります。
Armv9 CPUで次世代のAIエクスペリエンス
新しいArmv9.2 CPUクラスターは、Androidスマートフォン、デスクトップやノートPC、その他の機器に優れた性能とユーザーエクスペリエンスをもたらします。クラスターの各CPUコンポーネントが幅広い実世界の用途とワークロードを網羅しているため、一連の改善がまとめて得られます。たとえばCortex-X925は、アプリケーションの起動やウェブ閲覧の大容量のデータ移動を伴うワークロードに対応します。また、Cortex-A725は一般的なAIワークロードとAAAゲームに必要な持続性能を提供します。Cortex-A520の高いパフォーマンスは軽めのメディアやアイドルタスク、バックグラウンドタスクに適しています。このような現実的なエクスペリエンスの向上はすべてのコンシューマー機器分野でスケーラブルです。新しいArmv9 CPUはメインストリームデバイスや日常的なユーザーに性能向上と高度なAI機能を提供し、ユーザーエクスペリエンス指標全体で30%の改善をもたらします。
テクノロジーに対する消費者の需要はとどまるところを知りません。ユーザーがデバイスを使用する時間はますます長くなり、より高度なエクスペリエンスを期待します。新しいArmv9 CPUは、コンシューマーテクノロジーの未来を定義する高度な演算性能を通じて、ウェブ閲覧やアプリケーションの高速化、AAAゲーム、生成AIワークロードなど、あらゆるエクスペリエンスを向上させます。
Armについて
Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,000万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。
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