Arm、世界初のArmv9エッジAIプラットフォームでIoT向け次世代パフォーマンスを加速

February 27, 2025

 

発表の概要

  • 新しいCortex-A320 CPUと、Ethos-U85 NPUとの組み合わせによりIoT向けに最適化された世界初のArmv9ベースのエッジAIプラットフォームは、10億以上のパラメータのオンデバイスAIモデルを可能にし、AWS、Siemens、ルネサスなどの業界リーダーが支持。
  • 超高効率のArm Cortex-A320は、Armv9のメリットを活用してIoT市場向けの効率、性能、セキュリティを強化し、産業オートメーションやスマートカメラをはじめとする各分野で進化を促進。
  • Arm Kleidi for IoTは、パフォーマンスを最大70%向上させ、2,000万人以上の開発者が主要なAIフレームワークとシームレスに統合できるようにし、エッジAI開発を効率化。

英Arm(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:神奈川県横浜市、以下Arm)は本日、新しいArm Cortex-A320 CPUと、エッジAI向けの主要なAIアクセラレーターであるArm Ethos-U85 NPUを組み合わせた、10億以上のパラメータのAIモデルをオンデバイスで実行できるArmv9ベースのエッジAIプラットフォームを発表しました。

Armのシニア・バイスプレジデント兼IoT事業部門ジェネラルマネージャーであるポール・ウィリアムソン(Paul Williamson)は、次のように述べています。「AI革命は、もはやクラウドだけにとどまりません。スマートシティから産業オートメーションまで、私たちの世界がますますコネクテッドでインテリジェントなものになるにつれ、AIワークロードをエッジ側で処理することは単に有利なだけでなく不可欠なものとなっています。このたび提供開始するIoT向けに最適化されたArmv9エッジAIプラットフォームは、こうした進化における重要なマイルストーンとなります」

Armv9ベースのエッジAIプラットフォーム:効率性、セキュリティ、インテリジェンスがエッジ側に集結

OEM各社は、これまで以上に迅速にソリューションを提供する必要に迫られています。工場内で稼働する自律走行車、ソフトウェア更新によって機能を適用させることができるスマートカメラ、AI駆動のより自然なインタラクションを提供するヒューマン・マシン・インターフェースなど、IoTアプリケーション全体で増大するコンピューティング需要に対応する必要があります。

迅速なイノベーションと拡張のためには、AIワークロードを適切な場所で実行できる柔軟性、より強固なセキュリティ、ソフトウェアの柔軟性の向上が不可欠であり、Armv9テクノロジーはこれらのニーズを大規模に実現します。Armの新しいプラットフォームは、全く新しい超高効率のArmv9ベースCPUであるCortex-A320と、トランスフォーマーネットワークのオペレーターサポートを備えたEthos-U85 NPUを組み合わせ、IoT向けに最適化された世界初のArmv9エッジAIプラットフォームを実現しました。このプラットフォームは、昨年発売されたCortex-M85ベースのプラットフォームと比較して、機械学習(ML)性能が8倍向上しています。

Armテクノロジーの広範な普及は、パートナーがクラウドからエッジまで、あらゆるコンピューティング領域にわたってArmv9テクノロジーの力を展開できるようになったことを意味します。シリコンパートナーによるSoC構築や、ODMやOEMの次世代デバイス開発に最適なこのテクノロジーは、AWS、Siemens、ルネサス、Advantech、Eurotechなど、業界をリードするパートナーに歓迎されています。

新しいCortex-A320が、次世代のインテリジェントIoTデバイスのセキュアな基盤に

この新しいエッジAIプラットフォームの発表は、エッジコンピューティングの進化において重要なマイルストーンとなります。Cortex-A320は、先進的なAI機能と開発者へのメリットをIoTにもたらし、包括的なソフトウェアサポートとともに、Armv9アーキテクチャの機能を電力効率の高いデバイス向けに拡張します。

Cortex-A320は、ML性能のためのSVE2などのArmv9アーキテクチャの特長を活用しており、前世代のCortex-A35と比較して、ML性能は10倍、スカラー性能は30%向上します。

同プラットフォームのArmv9.2アーキテクチャは、ポインタ認証(PAC)、分岐ターゲット識別(BTI)メモリタギング拡張(MTE)などの高度なセキュリティ機能を、最小のCortex-Aデバイスにも提供します。エッジデバイスは一般的に露出した環境で動作し、機密データを扱うため、これは極めて重要な役割を担います。

エッジAIがArmベースに集約されつつある中で、この新たなポートフォリオ追加により、Armは最高性能からコストやエネルギー制約のあるデバイスまで、IoT向けに最先端のArmv9 Cortexプロセッサーファミリーを提供します。

Cortex-A320に関する詳細は、ブログ記事(英文)をご覧ください。

Arm KleidiをIoT向けに提供

エッジAIの導入において、ソフトウェア開発とデプロイの複雑さが最大の障壁のひとつとなっていました。そこで、プラットフォームのソフトウェア・エコシステムが本領を発揮します。Armはこのたび、Arm KleidiをIoT向けに拡張します。Arm Kleidiは、AIフレームワーク開発者向けの演算ライブラリのセットで、開発者の追加作業を必要とせず、ArmベースのCPU上でAIとMLのワークロードを最適化するように設計されています。KleidiAIはすでに、Llama.cppやExecuTorch、XNNPACK経由のLiteRTなど主要なIoT AIフレームワークに統合されており、Meta Llama 3やPhi-3などの主要モデルの性能を高速化しています。一例として、Llama.cpp上でマイクロソフトのTiny Storiesデータセットを実行する際、新しいCortex-A320に最大70%の性能向上をもたらします。

急速に変化する今日のテクノロジー環境では、市場投入期間は製品の成功を左右しかねないため、これらのメリットは極めて重要です。この新たなプラットフォームは、より高性能なCortex-Aプロセッサーとのソフトウェア互換性も維持しています。こうした拡張性により、開発者は、要件の変化に応じて成長・適応可能なソリューションを構築できます。Armv9の広範なエコシステムの活用と、LinuxなどのリッチOSとZephyrなどのリアルタイムOSの両方との互換性により、開発者はかつてない柔軟性を得て、既存のツールと知識を活用し、ソフトウェアの再利用を活用することで、市場投入期間を短縮し、総保有コストを削減できます。世界各地で2,000万人以上のArm開発者が活動する中、イノベーションの可能性は計り知れません。

将来への展望

今後、AIの未来がエッジへと移行していくことは明らかであり、今回発表の新型Armプラットフォームは、新時代のIoTイノベーションの原動力となります。Armv9のアーキテクチャ機能、高度なAI機能、包括的なソフトウェアサポートの組み合わせは、OEMと開発者の双方に新たな可能性を生み出します。

同プラットフォームは、エージェントベースのAIアプリケーション用に調整された大規模言語モデル(LLM)と小規模言語モデル(SLM)を実行することで、エッジでのユースケースの新境地を切り開きます。向かう先は、データ収集のより近い場所でインテリジェントな意思決定が行われ、レイテンシが削減され、プライバシーが向上する未来です。

これは単なる段階的な次の一歩ではなく、エッジコンピューティングとAI処理に対するアプローチの抜本的な変革を意味します。今回、IoTアプリケーション専用に最適化されたArmv9ベースのCPUが誕生したことで、これまでは不可能だった方法で、超効率性と高度なAI機能を同時に実現します。


パートナー各社からの賛同コメント

「エッジAIの進化は加速しており、ArmのIoTコンピューティングアーキテクチャの進展によって、エッジでのインテリジェンスに新たな可能性がもたらされます。エッジコンピューティングおよびエッジAIのリーディングプレイヤーであるAdvantechは、この革新をArmエコシステム全体にとって重要な前進と捉えており、よりスマートで効率的かつセキュアなAI駆動型アプリケーションをさまざまな業界にもたらすと考えています。この革新は、エッジコンピューティング市場における産業の成長と技術的ブレークスルーを促進するでしょう」

Advantech、組み込みセクター担当プレジデント、Miller Chang 氏

 

「Armの新しいエッジAIプラットフォームによって、当社のお客様は、最小限のメモリしか必要としない、制約のあるエッジデバイス向けのAWS IoT Greengrassの軽量デバイスランタイムであるnucleusライトを、Armv9テクノロジー上で実行できます。この2つの技術のシームレスな統合により、開発者にとっては最適化されたソリューションが実現しており、精密農業、スマート製造、自動運転車の異常検知のようなモダンなエッジAIアプリケーションを構築できます」

AWS、IoT担当バイスプレジデント、Yasser Alsaied 氏

 

「IoT市場が拡大を続ける中、Eurotechは最新のエッジAIアプリケーションでお客様が必要とするパフォーマンス、セキュリティ、効率性を備えたソリューションを提供し続けています。Armの新しいエッジAIプラットフォームは、次世代のリッチなIoTデバイスを構築する基盤となり、Armv9によって、当社はかつてない高水準のセキュアなパフォーマンス、エネルギー効率、ソフトウェアの柔軟性を活用できます」

Eurotech、CTO、Marco Carrer 氏

 

「真にスケーラブルな演算プラットフォーム上で、多様なユースケースと高度化の進むワークロードを提供することで、ルネサスは最も広範なAIoT市場セグメントへの対応を目指しています。AI/MLで高いパフォーマンスを発揮し、セキュリティを強化しつつ、電力効率と面積効率にも優れた最新版Armv9 Cortex-A320 CPUの登場を喜ばしく思います。本製品によって、当社は迅速なイノベーションが可能となり、高い拡張性によって効率化を達成できます」

ルネサス、エンベデッド・プロセッシング製品グループ・バイスプレジデント、Daryl Khoo 氏

 

「Siemensは、エッジ・アプリケーションでAIの能力を引き出すことに取り組んでいます。Armv9ベースの新しいエッジAIプラットフォームにより、今後はセキュアかつ高性能でエネルギー効率に優れた当社のAIイノベーションのポートフォリオを、産業、スマート・インフラストラクチャ、モビリティの幅広いアプリケーションのお客様すべてに提供できます」

Siemens AG、IC/エレクトロニクス向け研究・事前開発担当バイスプレジデント、Herbert Taucher 氏

 

Armについて

Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,000万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。

全ての情報は現状のまま提供されており、内容について表明および保証を行うものではありません。本資料は、内容を改変せず、出典を明記した上で自由に共有いただけます。ArmはArm Limited(またはその子会社や関連会社)の登録商標です。その他のブランドあるいは製品名は全て、それぞれの権利者の所有物です。©1995-2025 Arm Limited.