AMBA
AMBA(Advanced Microcontroller Bus Architecture)は、システム・オン・チップ(SoC)内の機能ブロックを接続・管理するための、自由に利用できるオープンスタンダードです。これにより、多数のコントローラやペリフェラルを搭載したマルチプロセッサの設計を、いち早く開発することが可能になります。
AMBA仕様はロイヤリティフリーで、プラットフォームに依存せず、あらゆるプロセッサーアーキテクチャで使用できます。AMBAは広く採用されているため、パートナーとの強固なエコシステムがあり、異なる設計チームやベンダーのIPコンポーネント間の互換性とスケーラビリティを保証しています。
30年近くにわたり、AMBAは基盤となるオープンスタンダードとして、数十億台に及ぶデバイスに搭載されています。
主なAMBA仕様
AMBAコヒーレントハブインターフェイス
(AMBA CHI)
AMBA CHI仕様は、完全にコヒーレントなプロセッサー接続のためのインターフェイスを定義しています。モバイル、ネットワーキング、オートモーティブ、データセンターなど、コヒーレンシーを必要とする幅広いアプリケーションに適しています。AMBA CHI仕様は、プロトコル層とトランスポート層を分離し、性能・電力・面積の最適なトレードオフを提供する多様な実装を可能にします。
AMBAコヒーレント・ハブ・インターフェイス チップ・ツー・チップ(AMBA CHI C2C)
AMBA CHI C2Cは、CHIの拡張機能です。オンチップCHIプロトコルがどのようにパケット化され、チップ間リンクで伝送されるかを定義します。高度なヘテロジニアスシステムとArmベースのコヒーレントSMPをターゲットとして、デバイス接続に単一の統一されたインターフェイスを提供し、最大の相互運用性を実現します。
AMBA Advanced Extensible Interface(AMBA AXI)
AMBA AXI仕様は、モバイル、コンシューマー、ネットワーキング、オートモーティブ、組み込みなどの幅広いアプリケーションにおいて、高周波、高帯域幅のインターコネクト設計を実装するためのプロトコルを定義しています。
AMBA Advanced High Performance Bus
(AMBA AHB)
AMBA AHB仕様は、組み込み設計やその他の低レイテンシーSoC向けに、Arm Cortex-Mプロセッサーで最も広く使用されているインターフェイスプロトコルを定義しています。
AMBA Advanced Peripheral Bus
(AMBA APB)
AMBA APBは、非常にコンパクトで低電力のため、コンフィギュレーションや低帯域幅のトラフィックを高性能インターコネクトから分離することが可能です。APBは、コンフィギュレーションレジスタへのアクセスに必要な低帯域幅トランザクションや、ペリフェラルにおける低帯域幅のデータトラフィックをサポートします。
主な特長とメリット
IPを再利用するには、消費電力、性能、面積の要件が異なる多種多様なSoCをサポートしながら、共通の規格が必要です。AMBAインターフェイスは、シンプルで低コストのペリフェラルプログラミングポートから、完全にコヒーレントな高帯域幅ポートまで、複数のインターコネクトやチップ間インターフェイスにまたがって拡張することができます。
オープンスタンダードな仕様であるため、異なるサプライヤーからのIPコンポーネント間の互換性を確保するのに役立ちます。幅広い互換性により、摩擦の少ない統合と設計の再利用が可能になり、所有コストの削減と市場投入までの時間の短縮に貢献します。互換性のあるIP製品は、メモリコントローラー、インターコネクト、トレースソリューション、GPU、CPU、ペリフェラルなど、多岐にわたります。
AMBAは、オンチップ通信規格として受け入れられ、業界全体で広く採用されています。信頼性と信用において長い歴史があり、世界中の規格ベースのIPで幅広く使用されています。
AMBAが半導体業界全体に広く採用されたことで、AMBAベースのシステム開発をサポートするサードパーティIP製品やツールは、包括的な市場を形成しています。
アーキテクチャを学ぶ
「アーキテクチャを学ぶ」ガイドは、あらゆるレベルのハードウェアおよびソフトウェア開発者がArmテクノロジーを理解し、使用できるよう支援するために設計された無料のチュートリアルおよびハウツーガイドです。AMBAについては3つのガイドが用意されており、例を提供するとともに、ユーザーが自分の知識を確認しながら進められるようになっています。
AMBA 5
AMBA 5は、自由に利用できるAMBAプロトコル仕様の最新世代です。コヒーレントハブインターフェイス(CHI)アーキテクチャを導入し、完全にコヒーレントなプロセッサーと高性能なインターコネクトを接続するためのインターフェイスを定義しています。AMBA 5はまた、AXI5、ACE5、AHB5プロトコルを導入し、前世代を拡張して多くのパフォーマンスとスケーラビリティ機能を追加するとともに、CHIと連携し、補完しています。
チップレットのサポート:オフチップ通信のためのAMBA拡張
チップレットとは、システムの一部を構成するシリコンダイのことで、複数を組み合わせることでより大規模で複雑なシステムを構築し、それを1つのコンポーネントとして、パッケージ化して販売できるように設計されたものです。つまり、1つのより大きなモノリシックダイの代わりに、複数のより小さなダイから1つのシリコンソリューションを構築することができます。ここにチャンスがあることは明確ですが、設計者たちは、まだ標準化されていないインターフェイスや、チップレット分割における多くの差別化されていない選択肢の中を模索する必要があり、新たな課題が生まれています。
AMBAは、30年近くにわたりオンチップ通信を可能にしてきました。Armは、AMBA CHIから始まったチップレット間を接続する拡張機能によって、AMBAを進化させています。
「初めて公開されたCHI C2C仕様のリリースは、オープンチップレットエコシステムに向けた大きな一歩となり、相互運用性の向上に貢献します。早期のAMBA開発でArmと協力できたことを嬉しく思います。これにより、NcoreとFlexNoCを含む、高帯域幅、低レイテンシーのネットワークオンチップインターコネクトIPテクノロジーの今後のバージョンに影響を与えることになります。新たなチップレットエコシステムでのさらなる連携を楽しみにしています」 - Arteris社COO、Laurent Moll氏 |
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「チップレット、ドロップレット、ダイレット、タイルなどの形に分離されたソリューションで、モアザンムーア時代は設計者と実装者の両方に大きなチャンスと技術的課題をもたらしています。多数のプロバイダーが提供するチップレット間の通信を促進し、バベルの塔が形成されないようにするために、標準化されたインターフェイスの必要性が非常に重要となっています。Cadence社はAMBA規格においてArmと緊密に連携してきた歴史があり、このパートナーシップを基盤として、フロー、リファレンスデザイン、顧客設計にわたるIPおよびチップレットソリューションで、新しいAMBA CHI C2C規格を市場に提供できることを嬉しく思います。この重要な新規格は、エコシステム実現の鍵となり、まだ初期段階にあるオープンなチップレットマーケットプレイスの促進につながるはずです」 - Cadence社、シリコンソリューションズグループR&D担当VP、David Glasco氏 |
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「富士通はチップレットを未来のプロセッサーアーキテクチャに不可欠なテクノロジーであると考えています。当社は基礎となるオープンなAMBA仕様をすでに導入しており、最新のAMBA CHI C2C仕様は、チップレット間など、低レイテンシーのオフチップのユースケースでデータを効率的に伝送する方法の確立における大きな変革です。これにより、今後チップレットエコシステムで何が実現されるのかを楽しみにしています」 - 富士通、アドバンストシステム開発本部、エグゼクティブディレクター、吉田利雄氏 |
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「Intel®が長い間構想してきた『チップレット革命』は、私たちが2022年に業界に導入したUCIeプロトコルの動機となりました。業界の成長と、UCIe™、高度なパッケージングテクノロジー、規格ベースのプロトコルマッピングの採用を嬉しく思います。UCIeと併せて、標準化とAMBA CHI C2C仕様のリリースは、チップレットベースのアーキテクチャに向けた業界の前進にとって重要な構成要素であり、Armとこれからも連携していくことを楽しみにしています」 - Intel社、カスタマーソリューションエンジニアリング担当VP、IFS、Bob Brennan氏 |
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「AMBA CHI C2C仕様は、効率的なチップ間インターコネクトを実現し、チップレットからオフパッケージの接続まで、幅広いユースケース向けにコヒーレンシーとコンフィデンシャルコンピューティングをサポートする強力なAIシステムの構築を可能にします。Arm、そしてその他のエコシステムパートナーとの連携を通じ、この新規格を推進するための過去4年間にわたる当社の意義深い取り組みは、業界を発展させ、AIとアクセラレーテッドコンピューティングにおけるブレイクスルーを促進します」 - NVIDIA社、ハードウェアエンジニアリング担当VP、Ashish Karandikar氏 |
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「チップレットは、AIとその他の高度なワークロードに必要とされるコンピューティングパフォーマンスの加速に鍵となるアーキテクチャソリューションを提供します。AMBAエコシステムの長期にわたる一員として、当社は次世代のチップレット設計を可能にする重要なテクノロジーであるAMBA CHI C2C仕様をサポートでき、嬉しく思います」 - Rambus社、シリコンIP担当GM、Neeraj Paliwal氏 |
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「チップレットは間違いなく、今後10年の半導体業界において、先端プロセスノードでの高性能SoCのコストに劇的に対応するための有効なソリューションとなります。併せて、UCIe PHYがチップレットインターコネクト向けの物理層規格として使用されるようになり、AMBA CHI C2Cは、オンチップのCHIをマルチチップレットインターコネクトに拡張するチップレットインターコネクト用プロトコル層にオープンスタンダードとして使用されるようになります。AMBA CHI C2Cは、セキュリティや仮想化などのArmアーキテクチャの機能をマルチチップレットの境界まで拡張するだけでなく、プロトコルトランジションの追加を伴わずにチップレット間のレイテンシーを低減します。AMBA CHI C2Cは基本プロトコルとして、広範なArmアーキテクチャエコシステムでコンピュートチップレット、IOチップレット、アクセラレーターチップレットの相互運用を可能にします」 - Sanechips社VP、Owen Shi氏 |
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「Siemens EDAは、AMBAの開発を支援し、AMBA CHI C2Cプロトコルを成長しているチップレットエコシステムに提供できることを嬉しく思います。これは、SiemensがAvery Verification IPとVeloceハードウェアアシスト検証ソリューションで注力している分野でもあります」 - Siemens EDA社、デジタル検証テクノロジー担当VP兼GM、Abhi Kolpekwar氏 |
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「コンピュート向けのチップレットベースのアーキテクチャは、ユビキタスAI時代のヨーロッパにおけるゲームチェンジャーとなる可能性があります。こういった環境における主な課題の1つは、相互運用性とコンポーザビリティのペースを保証することです。新しいAMBA CHI C2C仕様は、これを達成するための鍵となります。当社はその開発とリリースで、Armおよびエコシステムと協力できたことを誇りに思います」 - SiPearl社、創設者兼CEO、Philippe Notton氏 |
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「マルチダイシステムへの移行に伴い、設計者はチップレットの相互運用性を最大化し、レイテンシーを最小限に抑える標準インターフェイスを必要としています。Synopsysは、Armおよびそのエコシステムと緊密に連携し、CHI C2C仕様を開発・最適化しました。Synopsysの完全なUCIe IPソリューションによってサポートされているこの新しいチップレット規格は、Armテクノロジーを使用する幅広い高性能アプリケーションの市場投入までの時間を短縮し、ダイ間のレイテンシーを低減します。今回の発表は、ArmプロセッサーとSynopsys IPを組み込んだシステムの相互運用性、性能、帯域幅を最適化するための当社とArmの長期にわたる技術的な協力に基づくものです」 - Synopsys社、IPマーケティングおよび戦略担当シニアVP、John Koeter氏 |