「Arm Tech Symposia」:AIの技術変革に必要な、かつてないエコシステムのコラボレーション

November 29, 2024

中国、日本、韓国、台湾で開催されたイベントでは、AI時代のコンピューティングの変革に向けた、業界にとっての重要な機会が浮き彫りになりました。

「Arm Tech Symposia 2024」は中国、日本、韓国、台湾で開催され、会場規模、来場者数ともにArmがアジアで開催してきたイベントの中で最大級のものになりました。すべてのイベントの規模は、テクノロジー業界が直面している機会の大きさにふさわしいものでした。

Armのシニア・バイスプレジデント兼クライアント事業部門ジェネラルマネージャーのクリス・バーギー(Chris Bergey)は、台湾で行われたTech Symposiaの基調講演にて、「これはテクノロジーの歴史の中で最も重要な瞬間です」とコメントしました。

AIには、世界中の数十億人の生活を変革するという膨大な機会が存在しますが、これを実現するには、かつてない規模でのエコシステムの協力が必要条件となります。

Arm Tech Symposia 2024の来場者を歓迎するChris Bergey(シニア・バイスプレジデント兼クライアント事業部門ジェネラルマネージャー)

シリコンの再考

このようなエコシステムのコラボレーションの中核となるのが、テクノロジーの開発とデプロイに対する業界のアプローチを幅広く再考することです。これは特に半導体業界に当てはまっており、シリコンはもはや単に一連のコンポーネントではなく、AIの需要を満たす「新たなマザーボード」になりつつあります。

つまり、同一パッケージ内に複数のコンポーネントが共存することで、レイテンシー、帯域幅、電力効率を強化できます。

シリコン技術はすでに世界中の人々の日常生活を変えつつあり、言語のリアルタイム翻訳やテキストの要約など、画期的なAI機能をスマートフォンで実現しています。

Armのクライアント事業部門プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのジェームズ・マクニーヴン(James McNiven)は、韓国で開催されたTech Symposiaの基調講演で、次のようにコメントしました。「AIは、私たちの未来をより良くするものです。AIには、変革をもたらす可能性があります。」

Armのコンピュートプラットフォームの重要性

Armのコンピュートプラットフォームは、AIの成長において重要な役割を果たしています。これは、ハードウェアを組み合わせ、クラス最高のテクノロジー・ソリューションを実現することで、AI対応スマートフォンやソフトウェア定義型自動車、データセンターなど、幅広い市場に対応します。

そして、これを支えるのが世界最大級のソフトウェアエコシステムであり、2,000万人以上のソフトウェア開発者がArm向けのソフトウェアをArm環境で開発しています。実際、Tech Symposiaのすべての基調講演では、「ソフトウェアのないハードウェアは、何の価値もないことを理解しています」という発言が行われました。

Armのコンピュートプラットフォームにおけるソフトウェア面のメリットを説明するDipti Vachani(シニア・バイスプレジデント兼オートモーティブ事業部門ジェネラルマネージャー)

ソフトウェアが「テクノロジーに拍車をかける」仕組み

ソフトウェアは常にArmのコンピュートプラットフォームにとって不可欠な要素であり、Armは3つの方法を通じて、開発者が「夢(=アプリケーション)を実現する」ための理想的なプラットフォームを提供しています。

第1に、Armの一貫したコンピュートプラットフォームは、コネクテッドな世界人口の100%と関わりがあります。これにより、開発者は「1度記述すればどこでもデプロイ」可能です。

このプラットフォームの基盤となるのがArmアーキテクチャであり、主要なワークロードを高速化し、開発者とエンドユーザーにメリットをもたらす新たな機能と命令セットを定期的に導入することで、進化を続けています。

こうした機能の1つが、新型MediaTek Dimensity 9400チップセットを搭載したAI対応フラッグシップ・スマートフォンに採用されているSVE2です。このSVE2は、ベクトル命令を実装して動画/画像処理機能を向上させることで、より高品質な写真と長時間の動画を実現します。

AIのアーキテクチャ機能に対するArmの投資(「Arm Tech Symposia Shanghai」にて)

次に、アクセラレーション機能を通じて開発者の用途に最適化されたパフォーマンスを提供します。これは単なるハイエンドのアクセラレーターチップではなく、AI対応ソフトウェアへのアクセスによるパフォーマンスの解放を意味します。

その一例が、代表的なフレームワークとシームレスに連携し、AIワークロードをArm CPU上で最適に動作させるArm Kleidiです。これにより、開発者は追加作業を強いられることなく高速化したパフォーマンスを得られます。

東京で開催されたArm Tech Symposiaにて、Armのシニア・バイスプレジデント兼オートモーティブ事業部門ジェネラルマネージャーのディプティ・ヴァチャーニ(Dipti Vachani)は、次のようにコメントしました。「パフォーマンスや統合に関する技術的な心配をすることなく、世界を一変させるアプリケーションの開発に専念できるよう、私たちは、開発者がハードウェアを切り離して考えられる環境作りを目指しています。」

つまり、MetaのLlamaの最新バージョン、Google AI EdgeのMediaPipe、TencentのHunyuanが稼働する際、開発者はArm CPUを使用することで、パフォーマンス面の心配がなくなります。

Kleidiの統合は、Armの演算プラットフォーム上で数十億ものAIワークロードを高速化する見通しであり、最近のPyTorchとの統合により、ArmベースのAWS GravitonプロセッサーでLlama 3大規模言語モデル(LLM)を実行した際の、最初のトークンまでの時間は2.5倍高速化しています。

Arm Kleidiを説明するJames McNiven(クライアント事業部門製品管理担当バイスプレジデント)

最後に、開発者には、アクセスしやすく、使いやすいプラットフォームが必要です。Armの演算プラットフォームでの開発作業が、シンプルかつシームレスな「想定通りに動作する」体験となるよう、Armは大規模なソフトウェア投資によってこれを実現しています。

Arm Tech Symposiaの基調講演スピーカーは皆、以下のようにまとめました。「ArmとArmエコシステムの力により、私たちはプロセスを簡素化し、市場投入期間を短縮し、コストを削減、そしてパフォーマンスを最適化するのに必要な環境を開発者に提供します。」

Armエコシステムの役割

基調講演全体を通じて強調されたのは、新たな技術を現実化するArmエコシステムの重要性です。このことは、さまざまな分野の中核的な専門知識を組み合わせる必要のある、最新のシリコン設計の分野で特に当てはまります。

中国・上海で開催されたArm Tech Symposiaにて、Armのインフラストラクチャ事業部門プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのダーモット・オドリスコル(Dermot O'Driscoll)は、「設計と統合の全段階を1つの企業で対応することなど不可能です」とコメントしました。

Arm Tech Symposia(中国・上海)に登壇するDermot O'Driscoll(インフラストラクチャ事業部門プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント)

このような強力なエコシステムのコラボレーションを支援することは、Arm Total Designの中核的な目的であり、これによりエコシステムは、より効果的・効率的・高性能なシリコンソリューションの開発とデプロイを高速化できます。Arm Total Designは世界規模で拡大しており、2023年後半の発足以降、プログラムのメンバー数は倍増しています。Arm Total Designの各パートナーは、Arm Neoverse Compute Subsystems(CSS)上に構築される製品など、将来のシリコン設計を高速化する独自の製品を提供しています。

Arm Total Designの価値を体現している企業の1社に、韓国のRebellionsがあります。同社は最近、AIワークロードの電力効率を高めるための、最新の大規模AIプラットフォーム「REBEL AI」の開発を発表しました。このプラットフォームは、Arm Neoverse V3 CSSをベースとし、2nmプロセスノードとSamsung Foundryのパッケージングを使用して、ADTechnologyの設計サービスを活用しています。これはエコシステムの真のコラボレーションを意味しており、複数の企業が異なるタイプの高価値の専門知識を提供しています。

Dermot O'Driscollは、次のようにコメントしました。「AI時代にはカスタムシリコンが必要です。これを実現するには、エコシステムの全員が協力し、互いに高め合い、AIの需要の高まりに迅速かつ効率的な対応を実現することが絶対条件です。」

Arm Tech Symposia(台湾)にて、Armベースの新たなチップレット・エコシステムについて語るChris Bergey

チップレットシステムアーキテクチャ(CSA)でArmと協業中の大手技術パートナーがすでに50社を上回るなど、Arm Total Designは、かつてない活況なチップレット・エコシステムの実現にも寄与しています。その結果、AI時代で現在進行中のシリコンの設計・演算の課題に対処する上で鍵となる標準規格の枠組みが完成し、活況なチップレット市場が実現する見通しです。

1,000億個のAI対応Armベース・デバイスに向けた道のり

Arm CEOのレネ・ハース(Rene Haas)は2024年6月の「COMPUTEX」にて、2025年末までに1,000億個のAI対応Armベース・デバイスを出荷するというコミットメントを表明しましたが、Arm Tech Symposiaの基調講演の締めくくりとして、講演者は皆、この目標をあらためて強調しました。

Arm Tech Symposia(深セン)の基調講演を締めくくるJames McNiven

しかし、この目標を達成するには、テクノロジー業界のあらゆる場面で、エコシステムパートナーがかつてない規模で協業することが絶対条件です。幸いなことに、毎回の基調講演で紹介された通り、こうした取り組みの実例はすでに多数存在しています。

Armの演算プラットフォームは、このようなエコシステムのコラボレーションの中心的な存在であり、AIの技術基盤を提供することで、今後は世界の数十億人の生活の変革に寄与していきます。

Armについて

Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,000万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。

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