Mプロファイル・アーキテクチャ

Armマイクロプロセッサー・プロファイル(Mプロファイル)・アーキテクチャは、機械学習の組み込みシステムを対象にしています。超低消費電力が要求されるバッテリー駆動の機器から、高度な画像処理まで、幅広い用途に対応します。Mプロファイルは、タイムセンシティブな処理に理想的な、低レイテンシーで高決定性の動作を実現します。

Mプロファイル・アーキテクチャのバージョンにはArmv8.1-M、Armv8-MArmv7-MArmv6-Mが含まれます。

Armv8.1-M

Armv8.1-Mは、ソフトウェア開発の容易さとArmの豊富なサードパーティ・エコシステムを損なうことなく、Armv8-Mアーキテクチャの性能レベルを引き上げます。この新しいアーキテクチャは、機械学習(ML)とデジタル信号処理(DSP)の性能レベルを大きく改善させる、Mプロファイル・ベクトル拡張(MVE)機能を内蔵しています。Mプロファイル・プロセッサーの簡素化されたプログラマーモデルを実装することで、多くの開発者が高度な演算機能を利用することができます。Arm Cortex-Mプロセッサーでは、MVEはArm Heliumテクノロジーと呼ばれます。アーキテクチャは、Arm TrustZoneでシステム全域にわたるセキュリティも強化します。

 

Armv8.1-Mアーキテクチャの主な特長

Armv8.1-Mアーキテクチャは以下の特長があります。 

  • 信号処理と機械学習(ML)のアルゴリズムを高速化する、MVEと呼ばれる効率的なベクトル処理能力を提供。
  • ベクトル拡張機能では、半精度浮動小数点(FP16)と8ビット整数(INT8)が追加。
  • 低オーバーヘッド・ループ。
  • ギャザーロード、スキャッターストアのメモリーアクセス。
  • デバッグ機能の追加:パフォーマンス監視ユニット、DSPソフトウェア開発向けのカスタマイズ機能、デバッグ時に複数のセキュリティドメインをサポートする、デバッグ拡張機能を提供。

 

アーキテクチャ拡張機能

Armv8.1-Mは、いくつかのアーキテクチャ拡張機能をオプションで新たに備えます。機能は以下のとおりです。 

  • Helium – 将来のArm Cortex-Mプロセッサーで使用される、Mプロファイル・ベクトル拡張機能。
  • 低オーバーヘッド分岐拡張機能。
  • メモリー保護ユニット(MPU)用のPrivileged eXecute Never(PXN)拡張機能。
  • RAS(信頼性、可用性、サービス性)拡張機能。
  • デバッグ用の追加拡張機能。

Armv8-M

Armv8-Mアーキテクチャは、機械学習の組み込みシステムに最適化されています。低レイテンシーの処理に向けて設計された、プログラマーモデルを実装しています。オプションで、保護メモリー・システム・アーキテクチャ(PMSA)に基づく、メモリー保護ユニット(MPU)を搭載します。T32命令セットの派生品をサポートします。

 

Armv8-Mの主な特長

Armv8-Mアーキテクチャは以下の特長があります。 

  • 新たなシステムレベルのプログラマーモデル。
  • PMSAv8をベースにしたオプションのMPUをサポート。
  • T32命令セットのサブセット。
  • 各種アーキテクチャーの拡張機能により、高い設計自由度と拡張性を実現。
  • Armカスタム命令は、Armのソフトウェアエコシステムへのアクセスを低下させず、Arm Cortex-M33 CPUへカスタム拡張機能を追加できます。

 

アーキテクチャ拡張機能

Armv8-Mは、いくつかのアーキテクチャ拡張機能をオプションで備えます。機能は以下のとおりです。 

  • メイン拡張機能   Armv7-Mとの後方互換性を実現し、浮動小数点とDSP拡張機能に必要となります。
  • セキュリティ拡張機能  Armv8-M用のArm TrustZoneとも呼ばれます。
  • 浮動小数点拡張機能  メイン拡張機能の実装を必要とします。
  • デバッグ拡張機能
  • デジタル信号処理(DSP)拡張機能  メイン拡張機能の実装を必要とします。
  • Armカスタム命令  Arm Cortex-Mプロセッサーへカスタム拡張機能を追加できます。

Armv7-M

Armv7-Mアーキテクチャによってシンプルなパイプライン設計が可能になり、広範な市場とアプリケーションに対応するシステム性能レベルを実現できます。このアーキテクチャは、低サイクルカウントでの実行、最小の割り込みレイテンシー、キャッシュレス動作を提供し、高度な組み込みシステム向けに設計されています。T32命令セットの派生品に対応し、全体のサイズと決定性動作が絶対的な性能よりも重要となる実装向けに設計されています。

Armv7-Mは、いくつかのアーキテクチャ拡張機能をオプションで備えています。機能は以下のとおりです。

 

  • DSP拡張機能
  • 浮動小数点拡張機能

Armv6-M

Armv6-MアーキテクチャはArmv7-Mのサブセットであり、以下の特長があります。

  • Armv7-Mプログラマーモデルの軽量版。
  • デバッグのサポート用アーキテクチャ拡張機能を持つ、デバッグ拡張機能。
  • T32命令セットをサポート。
  • Armv7-Mとの上位互換性:Armv6-M用に開発されたアプリケーションレベルおよびシステムレベルのソフトウェアは、Armv7-M上で修正せずに実行可能。

Armv6-Mは、いくつかのアーキテクチャ拡張機能をオプションで備えます。機能は以下のとおりです。

  • 非特権/特権拡張機能  これにより、Armv6-MシステムはArmv7-Mと同じ特権レベルを使用できます。
  • PMSA拡張機能  非特権/特権拡張機能の実装を必要とします。

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